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「神の手」(上・下)

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パトリシア・コーンウェル著、相原真理子訳
「神の手」(上下)
講談社 (2005/12/20)


検死官スカーペッタシリーズ、第14弾。

元FBI心理分析官のベントンが、囚人と面談中に得た手がかり。そして新たに発生した惨殺事件も加えて、恋人のスカーペッタの助言を得るべく連絡をとる。
友人のマリーノや姪のルーシーなど、公私ともに問題を抱えながら解決に乗り出すが、情報と手がかりが思いがけないところで交錯し、また部下の邪魔も入り、なかなか結論に辿り着けない。

大人気だったこのシリーズだが、近年の作品には批判も多い。作者が2~3作前からスタイルを変えたこと、それによりスカーペッタという登場人物が持つ求心力が減ったことに対する不満であるようだ。
しかし個人的には今だ変わらず好きなシリーズで。スタイルを変えても、表舞台と距離ができても、主要人物達の現在はいつも興味深く、その苦悩すらも冷静に描くその筆力は相変わらず。
扱う題材が題材なだけに、もっと猟奇的な描写に走る作者も大勢いるのに対して、コーンウェルはむしろますます知識を深め、冷静さと分析力に磨きをかけていっているように見える。
検死官シリーズを通して、彼女自身が犯罪の各分野を順繰りに題材にして、それぞれについての彼女の視点や意見を伝えているようにも思える。

主要人物達について言うと、いつもながらどうしてもこうもすんなりいかないものかと、つくづく気の毒になる。並外れた能力を持つ人間は、それに値するだけの苦悩を背負うものだというのが、コーンウェルの信じているところなのかと勘繰りたくもなる。
そしてこれも毎作思うのだが、なんでこうもマトモじゃない人間ばかりが目立つのか。それはこういう職に従事するからこそ集まる人材ということで描いているんかな。うーん、平凡なOLしかなれなくて良かったよ自分。

新しいキャラがまた増えて、主要キャラのツリーがまた裾広がりになった。その分、次作への楽しみも広がる。

  by wordworm | 2006-04-25 10:12

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