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読書記録:2014年4月

亡国の薔薇 亡国の薔薇2

イモジェン・ロバートスン 「亡国の薔薇」(上下)

前作がちょっと期待と違っていたので、どうしようかと迷ったけれど、結局手に取った。で、正解だったと喜んだ。まあ、今度は勝手な思い込みがなかったので。
カストラートという題材を使ったのも面白く、更に充実した内容を楽しんだ。
それにしても、この2人がどうこうなることはないだろう、と思っていたら、可能性が出てきてしまったではないか。しかもこれ、次に続く謎が出てきたし。


高い塔の男

フィリップ・K・ディック 「高い塔の男」

第二次大戦で枢軸国側が勝っていたら、というパラレルワールド的なストーリーは結構好きで、何冊か読んでいたけど、ディックの手にかかるとこうなるか、と改めて力量を思う。
ジャンルとしてはSFに入れられているけれど、なんというか、やや幻想的な別世界フィクション。”易”が重要なファクターになっているのが、またなんとも。


惑星カレスの魔女

ジェイムズ・H・シュミッツ 「惑星カレスの魔女」

楽しくほのぼのな感じのスペースオペラ。ハードSFからはすっかり離れてしまったけど、軽めのSFなら今でも歓迎。
ついてない感いっぱいだった船長が、まさかこんな幸運(?)に恵まれるとは。
人にはふさわしい居場所があるんだ、と笑顔で読み終えた作品。


アンネ・フランクの記憶

小川洋子 「アンネ・フランクの記憶」(Kindle版)

ご自身がご本の中で言ってらっしゃったように、これは記録や調査ではなく、個人的な旅行エッセイ。もっと深く掘り下げることを勝手に期待していた私には、結構肩透かしを食らった気分。
淡々とした穏やかな語り口、そして優しい視点が、小川さんらしくて良いのだけど。
これ以上の掘り下げは、逆に無理だったかと思われる事情もあったので、致し方ないことか。


追撃の森

ジェフリー・ディーヴァー 「追撃の森」

ディーヴァーといえば、「大どんでん返し」。この作品でも、それは何度か発揮されてて、そのたびに、おおお、と。
なので、いつも通りに楽しめたのだが、ううむ、最後はこうきたか。ちょっと蛇足的な、でも必要な、という感じの終わり方、だったかな。


踊る骸

カミラ・レックバリ 「踊る骸」

シリーズものの第5弾。前作の最後に謎が出てきて、以下次号、という形だったので、楽しみに手に取った。
まさかナチがなあ、と思ったものの、実は最近多く出版されている北欧ミステリーには、かなりの割合で人種問題や極右、戦時中のドイツとの関係について出てくるんだよね。
理想の国ように日本では語られがちな北欧諸国だけど、決してそんな甘いもんじゃない。その辺りがどう報道されているのか、余談ながら気になった。
本編には、楽しみにしていた分は十分に満足させてもらった。相変わらずの軟派感(?)は承知済み。
果たして続きはあるのかどうか? 解説には書いてなかったんだよな。


あたしと魔女の扉

ジャスティーン・ラーバレスティア 「あたしと魔女の扉」

うーん、悪くはないんだが、ちょっと期待はずれ。もっと濃いストーリーかと思っていたもんで。
三部作の一巻目なのだけど、確かに物語の三分の一しか語ってない感ありありなので、続きは気になるのだけど、それでまた期待はずれだったら悲しいしなあ、と悩んでおく。
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  by wordworm | 2014-05-21 03:37

読書記録:2013年11月

ケイト・グリーン 「砕けちった月」

ブッ○オフで見つけて買ってみた。
霊能力のテレサが幻影で死体を発見し、以降次々と、という筋立てなので、タトットカードとか透視とか、その類のことに沿って展開されるストーリーは、ちょっと好みからずれてたか。
最後の最後まで繰り返されるどんでん返しで、どきどき・はらはら度は高し。でも、後味すっきり、とはなぜかいかなかったな。


ダークサイド

ベリンダ・バウアー 「ダークサイド」

前作「ブラックランズ」と同じ村で起こる悲劇。今度は別の主人公だけど、前の主人公のスティーヴンも少しだけ出てきて、彼のその後を知ることができたのは、思いがけないごほうび。
で、前作もそのケはあったけど、更に”ダーク”な今作。まさかね、え、ち、違うよね、なんてわなわなしながら読んでいたら、やられた……と打ちのめされてしまったよ。
救いがないような気もしながら、それでも読んで良かったと思わせるバウアーの力量に、再度感服。


脳のシワ

養老孟司 「脳のシワ」

月に1冊、養老先生。(え)
いつもの通り、時事的な事柄や科学的な疑問について、淡々と語ってくださる本。
多くのことについて、「先生らしい」と思って拝読してしまう理解と説得力がさすがです。


冬のフロスト 冬のフロスト2

R・D・ウィングフィールド 「冬のフロスト」(上下)

大好きなフロスト警部シリーズ。今回も人手不足の中、あれもこれもと押し寄せる事件に大奮闘。
下品で粗野で、でもあったかいフロスト、ほんとに好きだー。
思い込みや勘違いも多いけど、それでも最後には違わない、彼の”勘”。落ち込みつつ、自分を責めつつ、それでもユーモアを忘れない。
あと長編の未訳は一つ残っているだけか……早く読みたいやら、まだまだ先であってほしいやら。


消滅した国の刑事

ヴォルフラム・フライシュハウアー 「消滅した国の刑事」

2003年のドイツが舞台。東西統一から長く経ってないが故にありうる悲劇。
ナチスについてもそうだけど、どれだけ多くの人が心身に傷を負っているのかと思うと遣り切れない。子供の頃の傷でさえ癒えるのに数十年かかったりするのに、大人になってからのパラダイムシフトが、そう簡単に落ち着くわけがない。
心から責められない犯罪を扱ったミステリーは沢山あるけれど、これもまたその一つ。


世界樹の影の都

N・K・ジェミシン 「世界樹の影の都」

前作「空の都の神々は」から続いているのだけど、これまた別な主人公。でも前作で人の身に堕ちたイテンパスが主役級の一人。
良くできたファンタジーだなあ、とまた思う。魔法が荒唐無稽にならない描写に安心する。
それは、神はやっぱり神として描いているところに理由があるのかも。


ファーザーランド

ロバート・ハリス 「ファーザーランド」

ナチが大戦で勝利していたら、というパラレルワールドでのミステリー。歴史ミステリーが大好きな反面、実はこういうのも好きで、少しずつ読んでいるところ。
いくらパラレルのフィクションといっても、史実をきちんと押さえていないと意味がなく。きちんとした架空歴史が説得力のあるストーリーを生んでいる。
ラストについては賛否両論であるようだし、私も完全満足とはいかないけれど、それでもアリではある。ある。(言い聞かせ中)


殺人交叉点

フレッド・カサック 「殺人交叉点」

読んでみて、うわあ、やっぱりフランスのミステリー、とちょっと脱力。
や、面白いんだけど、斬新なんだけど、ほんとにフランスだね、と言わずにいられないのが、フランス産ミステリー。(しつこい)
中篇2作の本なので、適度なところで終われるのも良し。
そういえば先日、フランスミステリーが世界に広まりにくい理由みたいなブログ記事を読んだけど、あー、わかるなー、と思ったんだよね。映画もそうだけど、なんと表現したらいいのかわからない、独特のストーリー運びやキャラ&背景描写がね。
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  by wordworm | 2013-12-18 04:15

読書記録:2013年10月

百番目の男

ジャック・カーリイ 「百番目の男」

シリーズの2・3巻を先に読んで面白かったので、遅ればせながら1巻目を手に取った。
先々の為の伏線や謎を巧みに配しながら、これはこれで、そうか!と納得して読まされてしまう力量。
そして先を読んだ時に、ええっ!? と驚かされるという仕組み。
続刊もまた発行されたので、着実に追っていきたいシリーズの一つ。


チャーチル閣下の秘書

スーザン・イーリア・マクニール 「チャーチル閣下の秘書」

コージーかな、と思って読み始めたら、良い意味で予想外に面白かった本。
戦時下で、しかもまだまだ女性の地位が低い時代、才気煥発であるがゆえに苦しい主人公。でも時代だけじゃない、過去の絡みやあれこれも。
なんだかスパイアクション的な要素も出てきて、ちょっと不安な面もありつつ、でも続きが楽しみ。


フリーファイア

C.J.ボックス 「フリーファイア」

どうしようかなー、と思いつつ、続きを読んでしまうジョー・ピケット猟区管理官のシリーズ、6巻目。
何が辛いって、正義を貫いているが故に不遇な身に追い込まれる主人公の境遇。カウボーイの常道ではあるのかもしれないが。
今作でもそれは続いていて、更なる悪役とか、唯一の味方のピンチとか。
またセッショウなところで終わってしまったので、これまた続刊を買わずにはいられないんだろう。


涼しい脳味噌

養老孟司 「涼しい脳味噌」

養老先生のエッセイも、何冊目になることか。
おっしゃっていることはずっと変わらないし、文調も変わらないのだけど、それが元々好きだから、やっぱり手に取ってしまうのだな。ブッ○オフで105円だったしな。(台無し)
それでもあちらこちらに散りばめられた、はっと気づかされる一言や、知らなかった知識のカケラ達。
何回でも安心して読めて、長く少しずつ読みたい本ばかり。


八方破れの家

ジル・チャーチル 「八方破れの家」

さすがにダレ気味?と思っていたシリーズだけど、今作でちょっと今後の展開が楽しみになったかも。
といっても、本筋のミステリーの方ではないのが申し訳ないが。
謎解きの方は、むしろ今作はかなりヘタレ級。相変わらずの会話やキャラクターの魅力で読ませてはくれるんだけどね。


八百万の死にざま

ローレンス・ブロック 「八百万の死にざま」

ハードボイルドの代名詞のような古典の第一作。
昔に買って、何度も読んでから手放したのだけど、また読みたくなって買ってしまったの。
切なくて、タフで、強くて、ハードボイルドの要素が全部詰まってる。というより、このシリーズがあったから、ハードボイルドがこういうイメージになったのかも、と思うくらい。
改めてシリーズをそろえてみようかな、と考え中。


ロゼアンナ

マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー 「ロゼアンナ」

なんでこの本を買ってみようと思ったのか思い出せないのだけど、淡々と読めて面白かった本。
コイツが犯人か、と思ってみたら、全然違ったりして、するりするりと流れていくストーリー。
私が10歳にならない頃の発行と知って驚いた。
北欧ミステリーが話題になっている昨今だけど、まずはこちら在りきであったのだな、と実感。


白雪姫には死んでもらう

ネレ・ノイハウス 「白雪姫には死んでもらう」

前作がすごく面白くて、続きの翻訳を楽しみにしていたシリーズ。
また切なくて遣り切れない出来事の連続で、読み進むのに力がいるのだけど、それでも読ませてしまうところが、改めてさすがと思う。最後は、身体も心も痛くなる。
主人公の境遇も含めて、また続刊を楽しみに、じりじりと待つ。

*-*-*-*-*-*-*-*-*


村上もとか 「JIN―仁― 」全13巻

TVドラマでも話題になった原作、なんで今頃、なのだけど、友人が貸してくれて大喜びで読破。
村上氏の作品はかなり昔から好きなわりに、これはまだ買ってなかったんだよね。
真っ直ぐで気恥ずかしいところもあるぐらいなのだけど、優しい古臭さがいつも好き。
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  by wordworm | 2013-11-25 10:52

読書記録:2013年7月

読まない力

養老孟司 「読まない力」

先月から続いた、勝手に養老先生祭り。
先生の主張・哲学は常に首尾一貫しているのだけど、具体的に言ったらどういうこと?と尋ねる向きに、こういう時評集はわかりやすいのではなかろうか。経済、教育、世界情勢などなど、先生の”斬り”口調が快い。
ただ、私は先生の密な掘り下げがとても好きなので、こういう本を間に挟みつつ、立ち帰る本は、数冊に限られてくるのだな。


ブラッド・ブラザー

ジャック・カーリイ 「ブラッド・ブラザー」

前に読んだ「毒蛇の園」が面白かったので、軽い気持ちで買ってみたら、なんとこういうシリーズであったのだね。(遅すぎ)
ハラハラが好きな人にはぴったりの、ドンデン返しの連続。剥くたびにドロドロしたものが見えてしまうが、それもまた必要かな、と思わされ。
これは、シリーズ全部を読んでみなければおさまらない。変な言い方かもしれないが、兄のジェレミーが、どうか健やかでありますように、と祈らずにはいられない。


青雷の光る秋

アン・クリーヴス 「青雷の光る秋」

「シェトランド四重奏」と名づけられたシリーズの最終巻。前の3冊が気に入ったので、続きを楽しみにしていたのだけど。
こんな終わり方を期待していたわけじゃない、というのが正直な感想。こうでなければならなかった理由が、まだ自分の中で見つからない。
幸か不幸か、実は続きがあるという。翻訳を苦しく待つのみ。


希望のしくみ

養老孟司・アルボムッレ・スマナサーラ 「希望のしくみ」

養老先生と、スリランカの初期仏教であるテーラワーダ仏教界の長老、アルボムッレ・スマナサーラ氏との対談集。
なのだが、対談というより、似通った内容を”真理”とするお2人が、インタビュアーである編集者の質問に答える、という形になっていて、ちょっと拍子抜け。こう言ってはなんだが、その質問がすごく素人くさい、というのもあってね。
でも、スマナサーラ氏のおかげで垣間見えたテーラワーダ仏教は面白かった。自分でも意外なほど、仏教の説くところが腑に落ちる。って、仏教といっても、ものすごいバラエティがあるのだけど。


夏を殺す少女

アンドレアス・グルーバー 「夏を殺す少女」

上手く作ったなあ、というミステリー。
オーストリアとドイツで、それぞれ全く関係なく見える事件の調査から、少しずつ手繰られて、いつしか合わさって、見えてきた事件の概要。
それぞれのキャラクターも、荒削りながら魅力的だし、葛藤する姿に声援を送らずにいられない。


ロシア紅茶の謎

有栖川有栖 「ロシア紅茶の謎」 
         「ブラジル蝶の謎」
         「ペルシャ猫の謎」
         「46番目の密室」


未読の新刊がなくなって飢えていた私に、友人が日本で買ってきてくれた本。救世主に大感謝。
かのエラリー・クイーンにインスパイアされて書かれた有栖川有栖氏のシリーズは、正にクイーンを髣髴とさせる軽さと、謎解きを楽しむミステリーの原点を思い出させてくれる。
名作、という内容ではないけれど、肩の力を抜いて、さらりと読める持ち味が好ましい。
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  by wordworm | 2013-08-19 03:03

読書記録:2013年6月

ファイアーウォール

ヘニング・マンケル 「ファイアーウォール」(上下)

大好きなヴァランダー警部シリーズも、とうとう8作目。
最初は、かなり密度の濃い社会問題問いかけ色が強かったこのシリーズが、ヴァランダーが年をとるにつれ、彼の年齢ゆえの焦りや辛さという面が強調されるようになってきた。
今の世の中についていけない。彼の思いは、最初からこの言葉通りなのだけど、観点がどんどん変わっていって、今作では特にそれを感じずにはいられなかったのは、私自身も同様に思うようになってきているから、なのかもしれない。


藝人春秋

水道橋博士 「藝人春秋」

友人から借りた本。
水道橋氏のここ数年の活動や芸風(?)については、それこそネットでちらちらと目にしていただけなのだが、改めて彼のTVや本に触れてみたくなった。
良いとこついてるなあ、解釈の仕方が好きだなあ。違和感なく、そう受けとめられる文が並んでいる。


闇のしもべ

イモジェン・ロバートスン 「闇のしもべ」(上下)

想像していた内容と随分違って、ハラハラもアクションも揃ってた。
んだけど、うーん、ちょっと私のイメージする英国歴史ミステリとは、ずれるかも。子供達の描写とか。
十分面白かったから、次作が出たら読んでみるつもりではあるけれど。


虫眼とアニ眼

養老孟司・宮崎駿 「虫眼とアニ眼」

実は6~7月は、勝手に養老先生月間。ふぃーちゃりんぐ・養老先生。
や、オンライン古本屋のたまっているポイントが切れそうになった為、それを使って数冊買ったので。
ジブリの宮崎氏との対談、となっているが、対談というより、インタビュアーの質問に対して、それぞれが答える・意見を述べる、みたいな形。
宮崎氏の考えた&描いた理想の保育園のページが楽しい! 大人の私まで、一日いりびたってしまいたくなる。


ミステリー中毒

養老孟司 「ミステリー中毒」

尊敬している養老先生が、海外ミステリーファンであらせられ、しかもその理由も私とかぶってる!と読んで勝手に大コーフンした本。
なので、メイン日記の方に、いずれ感想をあげる予定。
(追記:感想というかタワゴトあげました)


竜

アン・マキャフリィ 「竜の戦士」 「竜の探索」 「白い竜」 「竜の歌」 「竜の歌い手」
            「竜の貴婦人」(上・下) 「ネリルカ物語」


今月の記録が少なめなのは、手元の未読本がほとんどなくなった為、家にある本を再(再々、再々々……)読してたから。
中でも、このパーンの竜騎士シリーズは、マジで何回読んだかわからないぐらいの本達。最初の3冊は特に。
マキャフリィは、ファンタジーにハーレクイン色を加えた作品が多くて、若かりし頃にはまったものだった。
改めて調べてみたら、この続きがまた出ていたんだね。もう好みからはずれたところもあるけれど、機会があったら古本を手に入れてみたいかな。もしくは、Kindle版。

*-*-*-*-*-*-*-*-*

かわぐちかいじ 「ジパング」全43巻

友人から一挙に全巻借りたマンガ。ずっと読んでみたかったので、大感謝。
骨太で、うなる描写も多々あったのだけど、ラストがそのスケールに合わないように感じられて残念。
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  by wordworm | 2013-07-16 13:06

読書記録:2012年11~12月

心臓に毛が

米原万里 「心臓に毛が生えている理由」

大好きな米原さんの本も、いよいよこれで最後かも。
頭が良いということ、知識と教養があるということの、見本のような方。
どの本を読んでも、ただただ惜しくて辛い。


管見妄語

藤原正彦 「管見妄語 大いなる暗愚」

いつ読んでも、どれを読んでも、安心して楽しめる上手さの藤原氏。
考えてみれば、今まで彼の文でつまらないと思ったものはないかも。
変わらない奥様の描写、最後の一言。キレのある文調で、これからも書き続けていただきたい。


空の都の神々は

N・K・ジェミシン 「空の都の神々は」

時空が重なり合って平行して語られるので、ちょっとわかりにくい面もあるけれど、世界観が新しい。
人間らしい神々や毒々しい貴族達の人物像も、深みがあって面白い。
ただ、クライマックスの盛り上がりは、今ひとつ。


この声が届く先

S・J・ローザン 「この声が届く先」

大好きなシリーズの、記念すべき10作目。
これだけ続いているのに、全く飽きさせることなく、むしろ緻密さを増しているのが、本当にすごい。
特に今作では、誘拐されたリディアの救出劇なので、そのスリルは並じゃない。
解説の「ライバルはジェフリー・ディーヴァー」という言葉も、あながち大げさじゃないよ。


アイアン・ハウス

ジョン・ハート 「アイアン・ハウス」(上・下)

相変わらず上手い!の一言のジョン・ハート。
ハードボイルドで義理人情で、愛と哀しみのサスペンス。(なんのこったい)
ベタな設定のようで、完全にオリジナルであるところ、唸るしかない。


裁きの曠野

C・J・ボックス 「裁きの曠野」

シリーズ5作目の今作に至るまで、少しずつ趣を変えてきた感がある。
なのだが、主人公ジョーの頑固一徹ぶりとか、家族への愛とか、そういう根幹は変わらない。
だからこそ、最後の一言が重くてならない。ほんとに、次はどうなってしまうのか。
個人的にファンなネイトが、再び登場したのは嬉しかったな。


特捜部Q-檻の中の女-

ユッシ・エーズラ・オールスン 「特捜部Q-檻の中の女-」

巷で大人気な上、マミィさんもお気に召されたとのことで、ずっと読みたかった一冊。
期待に違わず、や、期待以上に面白く、ページをめくる手が止まらなかったミステリー。
最後の最後まで、心臓をぎりぎり絞られるような感が続いて、最後は心筋梗塞になるかと思ったよ。
2作目以降のレビューがイマイチのようだけど、1作目でこれだけの出来なら、確かに後は難しいよなあ。


すべて死者は横たわる

メアリー・W・ウォーカー 「すべて死者は横たわる」

シリーズ4作目。1~3作目までは結構リアルタイムで読んでいたのに、4作目が出ているのをずっと知らなくて、ようやく気づいて購入……発行は98年だって。(くらっ)
と言いつつ、読んで良かった。モリーがずっと囚われていたことの決着が、こういう形でつくなんて。
彼女のこれからが、心安らかなものであればいい。


二流小説家

デイヴィッド・ゴードン 「二流小説家」

読み始めはそれほど、だったのに、いやもう、こんな展開が待っているとは。
二転三転、まだか、これでもか、みたいに、思いっきり揺さぶられまくりで終わったよ。
なかなかその感覚が消えなくて、別なミステリーにはしばらく手を出せなかった。


吊るされた女

キャロル・オコンネル 「吊るされた女」

これも、ずっと続けて読んでいるシリーズなんだけど、いまだに好きなのかどうか、はっきりしない。
というか、ストーリーもキャラもとても好きだし感嘆するんだが、主人公のマロリーがあまりに特異すぎて、なかなか感情移入できないのが原因なんだよね。
それでも読むたびに、オコンネルの力量を見せつけられて圧倒される。
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  by wordworm | 2013-01-09 04:37

一覧、など

半年近い間をあけてしまって、もうどうしたらいいやら。
驚愕、ため息、自己嫌悪。
の果てに、開き直り、ときたもんだ。

ということで、とりあえずこの数ヶ月に読んだ主な本、タイトルのみの列挙。

* * * * *

ファンタジー

フィリップ・プルマン 「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(上・下)
デイヴィッド・エディングス 「エレニア記」全6巻
     〃        「タムール記」全6巻
バリー・ヒューガート 「鳥姫伝」


SF

フィリップ・リーヴ 「略奪都市の黄金」


海外ミステリー

ローラ・ダラム 「ウエディング・プランナーは眠れない」
ローラ・チャイルズ 「グリーン・ティーは裏切らない」
ジャネット・イヴァノヴィッチ 「気分はフル回転!」
ヘレン・マクロイ 「家蠅とカナリア」
コリン・ホルト・ソーヤー 「殺しはノンカロリー」
アンドリュー・テイラー 「天使の鬱屈」
アーロン・エルキンズ 「水底の骨」
エリザベス・ピーターズ 「リチャード三世『殺人』事件」
    〃       「ベストセラー『殺人』事件」
    〃       「ロマンス作家『殺人』事件」
キャロライン・ヘインズ 「ダリアハウスの陽気な幽霊」
リース・ボウエン 「口は災い」
パトリシア・コーンウェル 「捜査官ガラーノ」
デイヴィッド・ハンドラー 「芸術家の奇館」
ジョアン・フルーク 「チェリー・チーズケーキが演じている」
レスリー・メイヤー 「メールオーダーはできません」
ジル・チャーチル 「愛は売るもの」


時代劇

池波正太郎 「鬼平犯科帳」(2)
畠中恵 「おまけのこ」


エッセイ

江国香織 「日のあたる白い壁」
壇ふみ・阿川佐和子 「太ったんでないのッ!?」
大江健三郎 「『話して考える』と『書いて考える』」
  〃   「暴力に逆らって書く」
  〃   「あいまいな日本の私」
  〃   「日本の『私』からの手紙」
  〃   「『自分の木』の下で」
米原万里 「愛の法則」
岸恵子 「ベラルーシの林檎」
長野智子 「デリシャスな結婚」


ノンフィクション
 
奥田昭則 「五嶋節物語 母と神童」


対談

小澤征爾・大江健三郎 「同じ年に生まれて」
阿川佐和子 「会えばなるほど」
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  by wordworm | 2008-04-01 03:53

須賀敦子さんの本

友人から借りた須賀さんの本、5冊。いつものように情けないことに、名前さえも知らなかった。
しかし最初の1冊を読んだ後、なだれこむように次々と手に取らずにはいられなかった。

心が震える、という言葉は、決して乱発していいものではないけれど。須賀さんの本を読んだ時に、どうしようもなく感じた感情を、他にどういう言葉で表したらいいのかわからない。
エッセイで小説で、強く理性的であったり、豊かな感情味に溢れていたりと、素敵な本は数え切れないほどあって、それぞれの形の感動を味わってきたけれど。須賀さんの本は、そのどれとも異なっている。今まで読んだどんな本とも、違う空間にたゆたっている。

流れるような、と言えば良いのだろうか、彼女独得の文体は。
それは、漢字をあまり多用しないこととか、頻繁に挟まれる句読点だとか、「」を使わないセリフ表現とか。きっと分析すれば、色々と要因は挙げられるのかもしれないけれど。
そのようなテクニックのレベルを超えて、とにかくこれが須賀さんの体内から、こんこんと湧き出る言葉の泉であると、輪郭をつけないままにそう感じとって浸って、彼女独自の夢の別世界に歩んで行く。

どの本も、須賀さんの過去の話の短いエッセイをまとめてある。本ごとにそれなりのテーマはあるのだが、そういう枠を感じることさえ邪魔に思えるほど、ただ彼女の世界はひっそりと揺れていて、境界線が見当たらない。
全ては彼女の記憶から。もしかしたら、それに若干の脚色が。
そう思えるほどに、鮮やかで確実で、でもどこか遠い霧の中をのぞいているような、そんな世界が広がり続けて、止まることがない。

イタリアに長く暮らした須賀さんは、42歳でようやく日本に帰国して、大学講師の職を得る。以来、イタリア語-日本語の翻訳を長く続け、翻訳本も両国で多数出版されている。
しかし、これだけのキャリアに関わらず、エッセイを初めて書いたのは、彼女が61歳の年である。その最初の著作、「ミラノ 霧の風景」が絶賛され、数冊のエッセイを、年をおきながら出版していったが、その執筆活動はわずか8年という短さで、彼女自身の死によって終わりを告げることになる。

「登場したそのときから、すでに完成された作家であった」
とは、「ヴェネツィアの宿」の解説の、関川夏央氏の言葉である。これ以上に、他に何が言えるのか、と思うほど。
名家の子女として育ち、キリスト教の私立女子学校に通い続け、フランスに留学し、イタリアに渡り、左派運動にその身を投じ、結婚し、死別し、2つの国を行き来して……
内部にこれだけのものを持ちながら、晩年になってようやく形として提示された彼女の歴史は、どんな泥も不純物も、全て底にあるがままにして、その上で一切が浄化されている。

こういう形で残す為には、61歳まで待たなければならなかったのだ。
そんなことを呟いてはみるものの、最後にようやく取りかかっていたという、初めての小説が形にならないままに終わってしまったことは、残念という言葉では足りないほどに口惜しい。

ここに積み上げてある5冊の本。どの本の、どの章から読み始めても構わない。
そこに書かれている文の全てが存在するのは、須賀さんの作り上げた世界の中でしかないものだから。
*-*-*-*-*-*-*-*-*

e0111545_9112725.jpg
「コルシア書店の仲間たち」
文藝春秋 (1995/11)
ISBN-10: 4167577011


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「ヴェネツィアの宿」
文藝春秋 (1998/08)
ISBN-10: 416757702X


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「トリエステの坂道」
新潮社 (1998/08)
ISBN-10: 4101392218


e0111545_9125552.jpg
「こころの旅」
角川春樹事務所 (2002/06)
ISBN-10: 4894561220


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「地図のない道」
新潮社 (2002/07)
ISBN-10: 4101392226

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  by wordworm | 2007-11-08 09:03

「長崎の鐘」「この子を残して」

永井隆著
「長崎の鐘」
サンパウロ (1995/04)
ISBN-10: 4805664053

「この子を残して」
サンパウロ (1995/04)
ISBN-10: 4805632399


友人から借りた本。
長崎に原爆が落ちた、1945年8月9日。長崎大学医学部の永井博士も、当地で被爆した。
「長崎の鐘」にて、浦上での克明な被爆体験を、そして「この子を残して」にて、残していく我が子2人への遺言とも言える言葉を記している。

この2冊を表すのに、圧巻、という言葉は合わない。
圧倒されて打ちのめされて、頭の中を真っ白にされた上に、全身を裏返されるような。読むだけでそれだけのものをもたらすのだけど、それは感動という言葉とは、ややずれたところにその円を描く。

特に「長崎の鐘」の方の筆致は、学者らしく冷静に淡々と。しかし語られる事柄の凄惨さ。
そして自らも被爆しながらも、その状態のまま、ひたすらに周りの人々の手当てを続けていく様子。医者だから、という言葉だけですまない、言葉にできない何かが溢れて過ぎていて。

永井博士を支えるものの一つに、敬虔なキリスト教徒としての信仰心がある。「この子を…」の方は、それが全編通して貫かれているし、「長崎…」の方でも、問答といった形をとったりしながら顔を出し、はずしては語れないようになっている。

宗教と聞いた時に、反射的に沸き起こる警戒の念。それは宗教を大義名分として、結局は自らの欲の為に行動する人が、後を断たないことにある。
しかし博士のこの潔さ。そしてこの原爆さえも、「人間の罪の証」と、「その罪を償う為に在る」と言い切るその心が、信仰を核としてこそ存在しうるのだとすれば。
我々はそこに、宗教が本来目指すべき姿をまざまざと目にして、初めて宗教というものの本質を語り始めることができるのだろう。

2冊を読んで、言いたいことが身体中から溢れているのに、多すぎて拙すぎて、言葉の形にできないままで。それは一部、涙という形もとりながら。
今はひたすら、失くしてはならない本だという、それだけが断言できることである。
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  by wordworm | 2007-11-05 14:37

「父・こんなこと」「小石川の家」

e0111545_8385169.jpge0111545_839539.jpg幸田文著
「父・こんなこと」
潮社; 改版版 (1967/01)
ISBN-10: 4101116016

青木玉著
「小石川の家」
講談社 (1994/08)
ISBN-10: 4062061988

友人から借りた本。
擬古典主義の代表的作家と言われる幸田露伴。彼の娘である文、孫である玉が、それぞれ露伴と過ごした年月を振り返って記したエッセイである。

無知・無教養を名乗って憚らない私は(…)、露伴の作品を読んだことがない。これだけ純文学を読まない文学部生というのが許されるのか全く(他人事)
しかしこの2冊を読んで、にわかに人間としての露伴への興味が、沸いて沸いて仕方がない。

娘の文に言わせれば、自分は兄弟の中でも一番出来が悪く、父の気に入らない子であったという。
だが、子に次々と先立たれた彼の元に、最後まで残って看取ったのは文であり。何の教育も受けなかったという言葉にも関わらず、この端正で真面目で女らしい文章は、胸に沁みて揺さぶってくれる。

露伴の孫であり、文の一人娘であるところの玉も、同様なことを書いている。にも関わらず、やはり懐かしい香りのする、優しく柔らかい文調は、到底素人とは言えないレベルだ。

彼女達から見た露伴という人間は、一緒に住むには決して楽な相手ではなかった。偏屈な殿様で、上げ膳据え膳が当然であり、大変な教養の持ち主である分、家族にもそれを当然に要求する。家族だからこそ、というのはわからないでもないが、その分受ける方の身内も、沸き起こる反発心は並々ならぬものであっただろう。
玉はともかく、文の方は、その辺りの感情も度々吐露しているのだが、それでもこの奥底にあって揺るがない、父へ、そして祖父への尊敬と信頼の念はどうしたことだろう。

友達のような親、というのがいかにも良いような。そんな空気が増えてきた昨今に。
この本を読んだ人の中には、露伴はとんでもない親と感じる人も多々いることと思う。
しかし私は反発と同時に、文や玉の後ろに隠れるように、身内としての露伴に、畏怖と感謝の念を感じずにはいられない。

親として、子供に伝えるべきことの優先順位。一人の人間を育て、世に出す責任感と愛情は、決してぬるま湯につかった心持ちで成し遂げられるものではない。
理屈として通らなくとも、断固として譲れないものがあるということ。教養の素として、叩き込まなければならないこと。
それらを、これだけの高い知性の持ち主から日々与えられるということが、どれだけ幸せなことか。
それにはまず、受けとめる方の器も勿論必要なことであって、文も玉も、更に玉は文からも得られたものが大きかったことは、この2冊を読めば理解できると思うのだ。

大人になってからわかる有難味、と言ってしまえば簡単だが、この三者の間にある”信頼”という名の繋がりが、羨ましくてならない。
実際、自分だったら、ここまで耐えられたかどうかの自信はないのだけれど。

血筋。遺伝。これだけの文章の上手さを、その言葉で片付けてしまうのは、あまりに浅い気がして勿体無い。
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  by wordworm | 2007-11-03 08:37

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