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読書記録:2013年12月

ムーンズエンド荘の殺人

エリック・キース 「ムーンズエンド荘の殺人」

雪の山荘版「そして誰もいなくなった」という宣伝に惹かれて買ってみた。
うーん、やっぱりオリジナルというか最初は強いわけで。クリスティーを読んだ時の衝撃には到底及ばず。
加えて、「そして誰も…」を読んだ後の数十年で、いろんなミステリーのパターンを読んでしまっているからなあ。
でも、それを差っ引いても、もうちょっとインパクトが欲しかった、という作品。


迷宮の淵から

ヴァル・マクダーミド 「迷宮の淵から」

お気に入りシリーズの著者であるマクダーミド、これは単発のノンシリーズミステリー。
複雑に入り乱れる事件と伏線も見事だし、登場人物も魅力的。骨太で勢いのある内容は、さすがの力量である。
完全にすっきり、という読後感ではなかったにしても、ラストの一文の「こうしてすべての幕が降りた」に十分納得。一番気になっていたことにきっちりと言及してくれたことに感謝する。


金星特急 外伝

嬉野君 「金星特急 外伝」

大好きなライトノベル、とうとう最後の最後。
アマチュアの頃からずっと応援している作家さんだけど、プロとしてこれだけのものを書かれるところ、ファンとして感無量。(勝手に)
外伝として、本編で語られなかったサイドストーリーや、その後の話が揃っていて、金星特急の世界がこれで完成形になったのだが。揃ってから見てみれば、改めて本当に素敵な世界の物語だったなあ、としみじみ胸が熱くなる。
嬉野先生の次の作品が待ち遠しくてたまらない。


夜明けのフロスト

R・D・ウィングフィールド、他 「夜明けのフロスト」

クリスマスを題材にした短編ミステリー集。大好きなフロスト警部シリーズの短編が読めるということで買ってみたが、他の作品も佳作揃いで楽しめた。
ナンシー・ピカードの作品が入ってたのは嬉しい驚き。やっぱり上手いなあ、と唸ってしまう。
フロスト警部は期待に違わず。短編として見事なまとまり方、と思った後で、考えてみれば長編も、短編が幾つか集まっているような形ではあるのだな。そういう意味では本領発揮(?)と言っていいのかも。


新艦長着任! 新艦長着任!2

デイヴィッド・ウェーバー 「新艦長着任!」(上下)

久々にスペースオペラを読みたくなって、クラシックなこのシリーズに手を出してみた。
当初の予想より、ずっと奥が深かったというか、シリアスな物語。でもエンターテイメント要素も満載で、とても楽しめた。
舞台は宇宙でも、繰り広げられる核にあるのは人間ドラマ。オナー・ハリントンの苦悩と決断に一喜一憂しながら、SFの世界を満喫できる。
これは続きも買う。買う。


死を哭く鳥

カミラ・レックバリ 「死を哭く鳥」

3作目まで読んだミステリーなんだけど、4作目の今作の評判がイマイチだったので、ずっと買っていなかった。ようやく読んでみて、その評価が当たっているところもあり、面白いと思ったところもあり、という感じ。
シリーズなので主人公達のドラマも楽しみの一つであるわけだけど、確かに今回はエリカの活躍がなく、残念な感はある。が、ラストで、こうくるか。
次を買わなきゃどうしようもないなー、と思いつつ、どうか期待はずれに終わらないように、と願うばかり。


㈱貧困大国アメリカ

堤未果 「㈱貧困大国アメリカ」

「アメリカとは」という本に手を出す気はなかったのだけど、こちらに関してはぜひ読んでみたくて購入。
三部作の最後は、アメリカの食品関連業界の話がメイン。ある程度は予想していたが、データと共に更に厳しい現実を突きつけられて、頭を抱えるばかり。
1% vs 99%。この事実を悲しいと思い、またそう思う余裕のある自分を責めてしまうのが、この手の本を読む上で覚悟していなければならないこと。
1・2作目も読みたいが、読んだところでどうすれば、という思いもまた。
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  by wordworm | 2014-01-21 09:31

読書記録:2013年8月

未読本がなくなってしまって、大変飢えていた月。
友人が色々貸してくれたので、なんとか生き延びた。(ぜえはあ)


虚偽証人

リザ・スコットライン 「虚偽証人」(上下)

リーガルミステリーでは、安定して好きなスコットライン。今作も女性弁護士が健気にがんばる設定で。
これで収まるか、と思いきや、ひっくり返される展開が続いて、最後まで目が離せなかった秀作。
あれこれ事件と人が絡み合って、これまた安定した面白さ。


冬の生贄

モンス・カッレントフト 「冬の生贄」(上下)

また新しい北欧ミステリー。女性警部補が活躍・葛藤する。
差別や悲しい過去が幾層にもなっていて、辛いながらも引き込まれて一気読み。
理想の国のように言われていた北欧が、決してそうではないということを、北欧ミステリーを読んで知らされるばかり。
それにしても北欧ミステリーが多く翻訳される昨今のブーム、ちょっと危惧しないでもない。
きっともっといろんな作品があるだろうに、「日本の読者はこれが好き」と決めてかかって、一部の作品しか訳していなかったらどうしよう、みたいな。


首斬り人の娘

オリヴァー・ペチュ 「首斬り人の娘」

大好物の歴史ミステリー。17世紀のドイツで、処刑史とその娘、若い医者が奮闘する。
時代ゆえの無知・偏見がもたらす社会の混乱、個人の運命の変遷は歯がゆいばかりだが、同時にその中で生きる人々の姿の逞しさと本能とエネルギーに、見習うべきものも感じずにはいられない。
まだもたらされない知恵と、その頃だからこその知恵の対比が面白い。


紳士の黙約

ドン・ウィンズロウ 「紳士の黙約」

前に読んで面白かった「夜明けのパトロール」の続編。またブーン&仲間の活躍が読める、と嬉しくて飛びついた。
期待に裏切らない面白さで、今回も一気読み。
義理と人情と正義感、そしてその中で生ききる勇気。下手な心理描写を入れないところが、更に良い。
ソッコーで前作を読み返し、その後でまた今作を読み返しても、面白さは変わらず。


神話の力

ジョーセフ・キャンベル、ビル・モイヤーズ 「神話の力」

読み終わるのにどれだけかかったの、というぐらいに、長く読み続けた本。
神話学者のキャンベル博士とジャーナリストのモイヤーズ氏との対談なのだけど、1ページどころか1行あたりの情報量が凄過ぎて、1章だけでも何冊もの本に値する。
キャンベル博士もすごい方なのだろうが、インタビュアーのモイヤーズ氏の知識量がすさまじくて、だからこそ充実した本になっているという、この上ない見本。
神話・民話が大好きな私にとって、こたえられない一冊。もっと若い時に読んでいたら、進路が変わっていたかもなあ。


孤独のチカラ

齋藤孝 「孤独のチカラ」

友人から借りた本。齋藤氏はTVでは何度か見たものの、本を読むのは初めて。
人生の中で一度でも限りない孤独の時期を体験するのが必要、と著者の体験から語っている。
TVで見た氏からは想像しにくい自己像や過去に、ちと驚く。平易な文章で読みやすい。


乱鴉の島

有栖川有栖 「乱鴉の島」

犯罪学者の火村氏が探偵のシリーズ、こちらは長編。
孤島で起こる殺人というありがち設定、登場人物もある意味典型的で、軽い読み物として読む用。


容疑者Xの献身

東野圭吾 「容疑者Xの献身」

人気作家の東野氏の、人気のガリレオシリーズの長編。
なんだけど、ううむ、やっぱり日本のミステリーは苦手である。
最後のどんでん返しも切なくて、これはファンも多かろう、と思うのだが、なんだろうなあ。
締めの甘さ、いや、全体的な詰めや構成の甘さ・卑近さが、読み応えを感じさせにくいのかも。
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  by wordworm | 2013-09-15 10:02

読書記録:2013年5月

日本人の矜持

藤原正彦 「日本人の矜持」

大好きな藤原先生の、9人の方々との対談集。斉藤孝氏、曽野綾子氏、佐藤優氏、ビートたけし氏などの名前を見て、即行で手に取った本@ブック○フ。
聞き手に徹するのではなく、藤原先生もガンガン自説を述べるので、各氏との掛け合いが面白い上、そういうことを考えていらっしゃる方々なんだ、という発見も沢山。
日本の小説は苦手なくせして、エッセイや対談は好きなんだよなあ、やっぱり。


特捜部Q-キジ殺し

ユッシ・エーズラ・オールスン 「特捜部Q -キジ殺し-」

シリーズ1作目が本当に面白くて、2・3作目を一気購入。勢いが落ちるかな、という危惧はなんのその、事件の面白さもさることながら、キャラがまた一段パワーアップして、目が離せないったら。
事件は残虐で後味も悪いのだけど、それでもぐいぐいと引きつけられて読んでしまうのは、決して怖いもの見たさではない、と思うのだ。


特捜部Q-Pからのメッセージ

ユッシ・エーズラ・オールスン 「特捜部Q -Pからのメッセージ-」

3作目も、しみじみ、すごいのだ。なんていうか、迷路にはまり込んで周囲が見えなくなるミステリー。
迷路の壁や方向に気を取られているうちに、その一本向こう側で着実に進んでいる、という感じ。
アサドだけでも十分謎なのに、ローセは一体何者と思えば良いのだろう。
カールの恋の行方も家庭内のあれこれも、とにかくとにかく、密着していくしかないシリーズだ。


策謀と欲望

P・D・ジェイムズ 「策謀と欲望」(上下)

80年代の女流ミステリー作家ブームの時に、重鎮というイメージで君臨していたP・D・ジェイムズ。
看板のダルグリッシュ警視シリーズは数作持っているが、全作集めたい、というほどではなかったのだけど、こうやって時間を置いて触れてみると、やっぱり上手い、渋い、重々しい。英国、という言葉が良く似合う。
原発に反対する村で起こった事件ということで、そんな興味もあって手に取った。
率先してではなくとも、やっぱりたまに著作を集めてみたくなる。


奇跡の脳

ジル・ボルト・テイラー 「奇跡の脳」

脳卒中を起こした脳科学者が、自らの体験をまとめた本。脳卒中を起こしている最中から、その後の回復過程で発見したことなど、その素晴らしい描写と内容に感動せずにはいられない。
人間は一生の間に脳の数%しか使わないそうだが、残りを目覚めさせることができたら、一体どんな世界が待っているのか、と空恐ろしくなるぐらい。
が、脳の使う領域が変わることで、そんな野心なども脱ぎ捨てて、悟りの世界に入り、「幸せ」でいられることができる、というテイラー博士の体験談。
では、懸命に悟りを開こうとしている人々の努力は、結局科学的に操作することができると切り捨てられてしまうものなのか。
様々なことと折り合いをつけるという意味でも、手がかりが多い本である。


濡れた魚

フォルカー・クッチャー 「濡れた魚」(上下)

1929年のドイツ、ヒットラーが台頭していたベルリンが舞台の警察ミステリー。
主人公のラートは、ヒーローからは程遠い存在で、彼の葛藤や苦悩に一喜一憂させられる。途中辛くなって、しばし本を置いたぐらい。
だからこそ、クライマックスからラストにかけて、読んで良かった、という感を非常に強くさせられた。
シリーズ物だそうなので、次作の翻訳が待ち遠しい。


雪の女

レーナ・ヘトライネン 「雪の女」

北欧ミステリーが次々に翻訳されているけれど、こちらのその中の一つ。
フィンランドを舞台にした警察小説。巡査部長のマリアが主人公。
北欧ミステリーには面食らうというか、え、ここでこうくるの?という描写が多いのだが、それは単にアメリカと英国のミステリーを読み慣れているせいであって、各国それぞれのミステリーがあるのだなあ、と当たり前のことを今更に発見中。日本って、ほんとに良い国だなあ……翻訳本の数は、きっと世界一。
この本もとても面白くて、マリアの淡々と着実な捜査が心地良い。女性ならではの事件と、女性ならではの共感あってこその解決が見られる。
こちらも、続きが楽しみなシリーズ。


たのしいムーミン一家

トーベ・ヤンソン 「たのしいムーミン一家」

なんで今頃、なのだけど、あまりに昔に読んだきりなので、中年になった今、どういう風に感じるかなあ、と思って読んでみた。
もうアニメの内容もほとんど忘れてしまったけれど、オリジナルはやっぱり別物。どこか枯れたような雰囲気や、白夜がきっとたまらなく嬉しいだろう、という想像は、オリジナルだからこそ感じるもの。
アニメのスナフキンに憧れた友人達は多いけれど、オリジナルのスナフキンはどうだろう。


裏庭

梨木香歩 「裏庭」

友人に借りた本。
「秘密の花園」、と思いきや、もっと現代版というか、期待していたようなファンタジー色は薄かった。
それは、ちょっとした言葉使いや文章に、そう思わせるものが時々見うけられたから。
日本人のくせして、どうも日本の小説に入り込むのが難しいのだけど、梨木さんの本は好き。
期待していたものと違っても、最後までゆっくりとページを繰らせてくれるのだ。
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  by wordworm | 2013-06-16 12:17

読書記録:2013年4月

クラバート

プロイスラー 「クラバート」(上下)

子供の頃から大好きなプロイスラーで、まだ読んでない翻訳本があると知って、大喜びで購入。
民間伝説を元にしているそうだが、彼オリジナルの素晴らしい物語に仕立て上げられていて、児童文学だからこそ、胸に真っ直ぐ届くメッセージに打たれる。
暗く、隠喩に富んでいて、読み終わった後も動悸が治まらず。


感謝祭は邪魔だらけ

クリスタ・デイヴィス 「感謝祭は邪魔だらけ」

コージーの新シリーズ、第一弾。食傷気味の形式であっても、手に取ってしまう……
米国に溢れる家事アドバイザー、アイディアだけでは仕事は来ないわよ、というアレコレも垣間見えたりして。
キャラも特別魅力的なわけでなく、ミステリーとしても中途半端な感があり、次巻以降はどうしよう。気軽に読めるのはいいんだけど。


RDG5

荻原規子 「RDGレッドデータガール5 学園の一番長い日」

とうとう定価で買ってしまった、文庫の5巻。最終巻の6巻の文庫化は、いつなのだ。
悪が完全な悪でなく、まだまだ学生レベルであったりするところも、楽しく没頭できるファンタジー。
うん、これってやっぱり、青春ストーリーなんだよね。(憧)


名著講義

藤原正彦 「名著講義」

日本文学をロクに読んでない私が、概略だけ知りたいというズルをしたかった、わけではなく、大好きな藤原先生の本だから。ほんとです。
武士道礼賛の姿勢を一貫して崩さない先生の姿勢も素敵だし、素直に読み解いて、素直に感動する女子大生の皆さんも好ましい。
日本の教育、本当に色々変えていくことができるのになあ、とため息。


ミステリ作家の嵐の一夜

G・M・マリオット 「ミステリ作家の嵐の一夜」

前作も面白かったけど、2作目も良かった、良かった。
なんというか、がん、と圧倒するより、細かい糸を沢山絡み合わせた迷路を歩くような、そんな雰囲気のミステリー。好きです。(親指立て)
これは、3作目の翻訳が待ち遠しい。新しく主要キャラになりそうな人も出てきたことだし。


チューダー王朝弁護士シャードレイク

C・J・サンソム 「チューダー王朝弁護士シャードレイク」

16世紀のイングランドで、かのクロムウェルに仕えるシャードレイク。
歴史ミステリに大変弱い私、今作もなかなかの面白さ。修道院とか大好物。
ただ、舞台設定頼りのところも否めず、ミステリーとしてはそこそこか。次作以降を読むとすれば、シャードレイクという人物の魅力と、彼を取り巻く時代背景が主な理由になるんだろう。
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  by wordworm | 2013-05-19 04:54

「旭山動物園物語」

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古館謙二著、篠塚則明写真
「旭山動物園物語」
樹立社 (2005/03)
ISBN-10: 4901769405


同様に、メイン日記からの引用。

辿り着くべき場所は一つだけ
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  by wordworm | 2010-05-25 01:12

「ルアン先生にはさからうな」「ルアン先生はへこたれない」

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ルアン・ジョンソン著、酒井洋子訳
「ルアン先生にはさからうな」
早川書房 (1995/05)
ISBN-10: 4150501912
「ルアン先生はへこたれない」
早川書房 (1996/01)
ISBN-10: 4150501998

同様に、メイン日記からの引用。

選択するは我にあり
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  by wordworm | 2010-02-20 13:57

「長崎の鐘」「この子を残して」

永井隆著
「長崎の鐘」
サンパウロ (1995/04)
ISBN-10: 4805664053

「この子を残して」
サンパウロ (1995/04)
ISBN-10: 4805632399


友人から借りた本。
長崎に原爆が落ちた、1945年8月9日。長崎大学医学部の永井博士も、当地で被爆した。
「長崎の鐘」にて、浦上での克明な被爆体験を、そして「この子を残して」にて、残していく我が子2人への遺言とも言える言葉を記している。

この2冊を表すのに、圧巻、という言葉は合わない。
圧倒されて打ちのめされて、頭の中を真っ白にされた上に、全身を裏返されるような。読むだけでそれだけのものをもたらすのだけど、それは感動という言葉とは、ややずれたところにその円を描く。

特に「長崎の鐘」の方の筆致は、学者らしく冷静に淡々と。しかし語られる事柄の凄惨さ。
そして自らも被爆しながらも、その状態のまま、ひたすらに周りの人々の手当てを続けていく様子。医者だから、という言葉だけですまない、言葉にできない何かが溢れて過ぎていて。

永井博士を支えるものの一つに、敬虔なキリスト教徒としての信仰心がある。「この子を…」の方は、それが全編通して貫かれているし、「長崎…」の方でも、問答といった形をとったりしながら顔を出し、はずしては語れないようになっている。

宗教と聞いた時に、反射的に沸き起こる警戒の念。それは宗教を大義名分として、結局は自らの欲の為に行動する人が、後を断たないことにある。
しかし博士のこの潔さ。そしてこの原爆さえも、「人間の罪の証」と、「その罪を償う為に在る」と言い切るその心が、信仰を核としてこそ存在しうるのだとすれば。
我々はそこに、宗教が本来目指すべき姿をまざまざと目にして、初めて宗教というものの本質を語り始めることができるのだろう。

2冊を読んで、言いたいことが身体中から溢れているのに、多すぎて拙すぎて、言葉の形にできないままで。それは一部、涙という形もとりながら。
今はひたすら、失くしてはならない本だという、それだけが断言できることである。
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  by wordworm | 2007-11-05 14:37

「孫娘からの質問状 おじいちゃん 戦争のことを教えて」

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中條高徳著
「孫娘からの質問状 おじいちゃん 戦争のことを教えて」
小学館 (2002/08)
ISBN-10: 4094030069


海外子育てについてのサイトを見ていた時に、お薦め本としてのせられていたのが本書。
そして私も海外組の端くれであるからこそ、余計に読んでみたかった。

ニューヨークの高校に通う孫娘が、歴史のクラスで太平洋戦争について学ぶことになり、教師の「戦争の体験や見方は、国によって違う」という言葉により、戦争体験者である祖父に、質問状を送ってきた。かつて軍人を志した著者が、孫娘の問いかけ一つ一つに、真正面から答えていく。

「国によって違いがある」、これをきちんと言ってくれた歴史の先生にまず拍手。こんな当たり前のことを、気づかない人達があまりに多い。出発点はそこにあるのに。
その先生の方針のおかげで、中條氏の綴る言葉を読めたこと、再度感謝を込めて拍手を送りたい。

高校で歴史を選択したけれど、高三の最後は受験を控え、どうしても授業が駆け足になる。だから江戸までは濃く学ぶものの、近代史は比較してあまりに薄い。
世界の一部が「日本」と聞いた時に描くイメージは、この近代史に負うところが大きい、ということ。国の歩みも教養として必須のものであるけれど、鎖国以降の歴史が他の国にとってどれだけの重みを持つか、ということ。どれも大学以降に実感した。

何に限らず、百人いれば百通りの物事の見方があるけれど。歴史に関してこそ、常にこのことを念頭において学ばなければならない。
意識して自分をその方向に律していっても、進む道は常に「独断」「偏見」の満載であるから。そして、いくらそれを排除しようとしても、自分自身一人の人間である限り、全方向に満遍なくというのは不可能であるから。

そういうことを前提として、この本の内容は大変に面白く、また勉強になる。
士官学校在学中に終戦を迎え、厳密には戦場に出たことはない著者が、それでも敗戦という事実に深く心に傷を負う。敗戦後の日本の対処、そして迎える”戦後民主主義”に、強く感じる違和感と抵抗感。一つ一つ乗り越え踏みしめ、それでも今日なお呟かずにいられない、「生きていてすまない」という言葉。
自分の心の傷を、何十歳もの差がある孫という身内に、率直に隠すことなく語りかける口調。あふれる愛情に涙が出る。

戦時での米国を始めとする各国の思惑、それに対する怒りと反論、天皇という存在に対しての思い、現在の日本人への多数の警告。
お孫さんである景子さんが、先生と練った質問がまた的確であったのだろうけれど、これだけの多岐に渡った意見を、それも非常に真摯な姿勢で答えた内容を知らせてもらえたというのは、今を生きる我々にとって、財産というほかはない。

繰り返しになるけれど、歴史の解釈は各人固有のものがあるので、この内容に対しての反論も山ほどあるだろう。
しかしこういう話は、賛成・反対という領分で語られるものではないとも思う。
これも一つの貴重な意見、そして知るべき知識の一つ。吸収することこそ大事と思う。

たまたま戦勝国であるアメリカに住む身として。同様にここに住む中国や韓国の人々から、何度も怒りをぶつけられた経験を持つ身として。
そして次代の子供を育てる身として、読むべき本であり、読めて良かった本であり。
できれば娘に読ませたいと、これから伝える術を考えさせてくれる本である。
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  by wordworm | 2007-08-15 13:19

「打ちのめされるようなすごい本」

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米原万里著
「打ちのめされるようなすごい本」
文藝春秋 (2006/10)
ISBN-10: 416368400X

米原さんの書評全集であり、ガンで亡くなられる前の闘病記も含めた絶筆本である。

本は昔から好きで、それなりに読んでいるつもりではある。ジャンルの偏りは自覚しているけれど。
それでも読めば読むほど、「自分は何も知らないのだ」と思い知らされるのが不思議だ。手に取った本のちょっとした一言に教えられるたび、まだまだ知らないことがどれだけあるかと実感する。
特に知識豊富と一読してわかる方の書いた本であれば、その思い知らされる回数は更に増す。

米原さんのこの本は、正にその中でも顕著にそれを感じさせられる。文字通り、読み進むにつれ、何度となく打ちのめされて限りがない。
タイトルは勿論、米原さんがこれらの本を読まれて感じられたことからなのだけど、私はこの本自身が私にもたらした感情として受け止める。

最後のガンとの闘病記は、胸に迫って余りある。実際、彼女が病気について赤裸々に語ったものではなく、あくまで書評という連載を通して、ガンについての本を読み漁った感想を書かれているのだけれど。
書評に徹していて、決して自身の辛さを訴えられているわけではないのだけれど、どうしようもなく涙が出る。その壮絶さと必死さに、居ても立ってもいられなくなる。

通訳・翻訳・作家として、非常に多忙な方だったと知っている。にも関わらず、これだけの読書量はどうしたことか。
更に、選んだ本のジャンルの多岐にわたるが故に、計り知れないほどの知識欲と好奇心とを感じとり、全身から溢れ出る彼女のエネルギーに、ただただ脱帽するばかり。その姿勢は毎日を無為に過ごしている自分を、心の底から「打ちのめす」。
まだできることがある。まだやれることがある。最後の一瞬までその思いに満ちていた彼女の筆に、ひたすら駆り立てられてゆく。そのまま速度をつけて走り出したところで、到底彼女の立ち位置には近づけないだろうとわかっていてさえ、どうしようもなく何かをせずにはいられない気持ちが止まらない。

書評という、ある意味限定された範囲でさえ、これだけの思いを読者に抱かせた米原さん。
その死を惜しんでも惜しみ切れず、でもそれは誰よりも、彼女自身が感じたことであっただろう。
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  by wordworm | 2007-05-13 11:53

またまた閑話休題

まだいきます、まだまだあります。

* * * * *

e0111545_7313683.jpg田中芳樹×土屋守
「イギリス病のすすめ」
講談社 (2001/10)
ISBN-10: 4062731193

イギリス暮らしの長い土屋氏と、学生時代からの友人であり、やはりイギリスファンである田中氏が、英国暮らしの魅力を語る。食べ物や暮らしぶりについての本は多々あるけれど、文学まで踏み込んで語り合うのは、このお二人ならでは。


e0111545_7355827.jpg田中芳樹著
「摩天楼」、講談社 (1996/10) 、ISBN-10: 4062633469
「東京ナイトメア」、講談社 (2002/04) 、ISBN-10: 4062734060

スーパーウーマン薬師寺涼子警視の活躍(?)ぶり。それに振り回される部下の泉田クン。田中氏がストレス解消の為に書く、と言い切るだけあって、ストーリーから登場人物まで、ハチャメチャ荒唐無稽で、読んでるこちらもすかっとする。


e0111545_7463295.jpg植木等著
「夢を食いつづけた男」
朝日新聞社 (1987/02)
ISBN-10: 402260431X

理想の男性・植木さん。訃報に涙する私に、友人の旦那様は、そっとこの本を差し出して下さったのです(脳内脚色)
植木さん以上に大物であられたかもしれぬ父上の生涯について、詳しい調査の上、至極真面目に書かれた伝記。明治から昭和にかけての日本という国の一側面まで映し出す。


e0111545_742531.jpgジョアンナ・カール著
「チョコ猫で町は大騒ぎ」
ソニーマガジンズ (2005/05)
ISBN-10: 478972557X

食べ物屋ミステリー(そんな言葉はない)が増える中、今度はチョコレートショップを舞台にした、楽しくにぎやかなコージー・ミステリー。チョコがこれでもか、これでもかと種類も多彩に登場するので、ダイエット中に読むのは大変危険な本。


e0111545_7442213.jpg中島京子著
「FUTON」
講談社 (2003/06)
ISBN-10: 4062118939

借本。田山花袋の「蒲団」を題材にした、ちょっと切なく淡々とした、日本とアメリカをまたいだ数人の情景。私小説というジャンルについて改めて考えながら、ゆっくり時間を追っていく。

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  by wordworm | 2007-04-23 07:30

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