「アンティーク鑑定士は見やぶる」

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エミール・ジェンキンス著、田辺千幸訳
「アンティーク鑑定士は見やぶる」
ランダムハウス講談社 (2006/6/2)
ISBN-13: 978-4270100455


現役鑑定士という著者による、ミニ鑑定講座付の軽いミステリ。

アンティーク鑑定士のスターリング。日々いろんな骨董品が持ち込まれては鑑定を依頼される。
ある日かかってきた、見知らぬ老人からの電話。そして出張先のNYで出会った、急死した老婦人の高価なサモワール(コーヒーポット)。婦人の死の謎と、老人が持つ鋳型の糸が向かう先にあるものは、金銭欲と所有欲にかられる人間模様。別々の事件に思えた2つの骨董品は、絡み合って1つの大きな事件に行き着く。

原書を読んでないのでなんとも言えないのだが、ちとわかりにくい文章。主語が曖昧だったり説明が足りなかったりで、え?と思う箇所が幾つかね。
それ以外は、軽い息抜きの本のつもりで読み始めたら、進むにつれ予想外に(失礼)面白味が増して、最後にほっと一息。最良ではないにせよ、良ミステリの範疇に入る本でした。

日本のTV番組でも人気だった鑑定。自分の持っている古めの品、もしかして一財産だったりして!?というのは誰でも夢見るところ。かと思うと、二束三文で手放した品が実はお宝だったりして、これはもう運に恵まれるしかないでしょう。と、古めの品はガンガン捨ててしまう引っ越し族のアタシは開き直る。
でも屋根裏に眠る大叔母さんの形見とか。これはひいおじいちゃんから受け継いだ大事なステッキなのよ、とか。お宝としての価値も勿論気になるけれど、要は所有する本人にとって、どれだけの思い入れがあるか。最後はそれに尽きるのだね。

主人公のスターリングは知識も豊富な女性鑑定士。品物を一目見たら、頭の中のその分野に相当する知識が引き出され、市場価値を加味した上で、ざっと額をはじきだす。その知識の片鱗を、各章の最初にある「Q&Aコーナー」で見せてくれる。
しかし同時に、本人がその品物をどれだけ大事に思っているか、という側面もきちんと理解していてくれる上に、自身がお宝に出会った時のはしゃぎぶりで、宝探しの醍醐味を知っているところも見せてくれて、なかなか魅力的な女性なのだな。

雑学的な面白さも入れて、ミステリとしての筋立てもあれやこれやと詰め込んで、スターリングの恋愛模様も盛り込んで、と一作目だからか意気込んだ作品となっている。
登場人物の設定もシリーズ化を前提としているようであり、次作はどんな展開になるか、期待を持たせる終わり方。
鋳型の話を持ち込んだおじいちゃんに、ほろりと参ってしまった私としては、次回もこんなキャラとエピソードを絡めてほしいと願っている。
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  by wordworm | 2006-12-19 06:13

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