「第三の時効」

e0111545_6333331.jpg
横山秀夫著
「第三の時効」
集英社 (2003/02)
ISBN-13: 978-4087746303


友人から借りた本。
彼女から横山氏を紹介してもらって、以来長編を数冊読ませてもらったが、これが初の短編集になる。

警察小説の旗手と言われる氏らしく、6つの短編が収められているが、全て舞台はF県警本部の捜査第一課。強行犯捜査の一班~三班の刑事たちが出会う事件を通して、それに関わる警察側の人間にそれぞれスポットライトが当てられるという設定の連作になっている。

横山氏の今まで読んだ長編は、どれも緻密な構成と暗部を描くが故の濃い筆致、そしてラストに受ける衝撃もあって、読み応えのある作品ばかり。
その手法が見事に短編という制約内に生かされていて、むしろ1冊の中で氏の持ち味を何回も楽しめる分、横山氏を初めて読むならばこの本も良いかもしれない。

つくづく男性の書く、男性の世界だなあ、と思う。あまりにキャラがそちら方面で出来上がりすぎていて、女性らしさが入り込む余地がない。事件の関係者として勿論女性は複数登場するのだが、どこか男性信奉者が抱く女性イメージがそこにある。
私の歪みきった偏見からすると、いかにも日本の推理小説といった色があり、正直言うとこの点では得意ではない。

なのにこの本は、そんな私でも一気に読ませる。まず一作ごとのプロットが見事。最後の最後でこういうことだったのか、と目を開かせるものがなければ、ミステリーとしての魅力はない。それが6編全てに必ず用意されている。
その事件を解く過程で、これまた欠かせないのが心理描写。それも同じ警察内の一人一人をその都度強く深く描くことで、飽きさせることなく惹きつけ続ける。
常に暗く殺伐とした内容なのに、そのシリアス感がリアルさを伴って迫ってくる。一作だけ取り上げて一本の映画を作れそうな、それだけの奥深い内容を持つ。

改めて横山氏の力量を実感した一冊だ。
[PR]

  by wordworm | 2006-12-12 06:31

<< 「ニューヨークの魔法使い<㈱魔... 魔術師ベルガラスシリーズ全3巻... >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE