「世間知らずの高枕」

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山本夏彦著
「世間知らずの高枕」
新潮社 (1996/11)
ISBN-13: 978-4101350141


コラムの達人による名物コラム、150編を収録したもの。
前に読んだ本で一気にファンになり、これが2冊目。ただ重複しているコラムも幾つかあったので、今度は選んで買わないと。

しかし変わらず圧倒される。何回読んでも目を瞠る。
800字、または1,200字。わずか2ページ、3ページ。それだけのものが持つ、切れと冴えと深み。毒と悲哀と温かさ。
文章力という言葉があるけれど、その言葉がこれほどふさわしく、また足りないと思える文は、探したってそうそうお目にかかれるものではない。
かいつまんで言え、ひと口で言え、字引はせいぜい5行か10行で言ってのける。それを基本とする氏の書かれる、極限まで削ぎ落とした文は、美しいというほかはない。古語と武士の美と思う。

また、各コラムのタイトルが秀逸だ。「敗者復活戦と称して」「三人寄れば閥」「あとの半年ゃ寝てくらせ」……以前に「タイトルだけが人生だ」というコラムを書かれたぐらいであるから、氏のつけられた題には一層の切れがある。たかだか日記の題すら悩む私には、到底できない芸当だ。(真似する気だったのか)(そもそも同列に置くな)

前の感想でも書いたが、氏の意見に手放しで賛成はしない。それは氏も本意ではない。
しかし例え異見を述べたところで、こちらの根拠は満足に語れず、またそれだけの深さもなく。ばっさりと斬って捨てられること間違いなし。
その語り口の鮮やかさと、意を違えようとも認めずにはいられない、核の堅固なその主旨と。
ミクロを観察しつつも、マクロの見方を失くさない。届かない場所から、幅広く深く据えられたその視点。惚れ込まずにはいられない。

小説家としても素晴しい書を何冊も残されているが、あまりにコラムが魅力的に過ぎて、まだ長編に手を出す気になれない。
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  by wordworm | 2006-11-13 07:13

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