人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「闇を見つめて」

「闇を見つめて」_e0111545_950568.jpg
ジル・チャーチル著、戸田早紀訳
「闇を見つめて」
東京創元社 (2006/03)
ISBN-13: 978-4488275112


グレイス&フェイヴァー・シリーズ第3弾。
え、私、1・2冊目の感想書いてないよ。何でだ、面白かったのに(過去日記検索中)

ジル・チャーチルは主婦探偵ジェーンのシリーズで好きになって、この別シリーズが出た時には躊躇わず購入した。
舞台は大恐慌後のニューヨーク。破産した父が自殺し、残された財産もなく、上流階級から一転して貧乏生活を余儀なくされたロバートとリリーの兄妹。つましく必死で暮らす2人のところに、突如大伯父からの遺産が舞い込んだ。それは遺された田舎の屋敷に10年間住み続ければ、その屋敷と信託財産が彼らのものになるという。
同居人にも恵まれ、張り切ってスタートした新生活だが、そこに起こる事件の数々。兄妹は解決に乗り出すが……
といった、典型的なコージーミステリーのシリーズだ。

そして3作目になる今回は、敷地内の小屋で死体が発見されるという事件が起こるが、謎解きは単純で、ミステリーだけでは物足りない。
その分、ボーナス行進といった過去の実事件に主要キャラを絡めて描いてみたり、兄妹が近所にもう一段溶け込もうとする努力をしたり、1・2作目では足りなかった設定の再固め・背景をより密にする為の筆の追加といった様相が強い。
このシリーズを書く為に、アメリカ史について膨大な調査をしたというチャーチルが、その成果を良く生かした一冊と言えるかもしれない。

メインキャラが肉付けされ、一段と身近になった。それは作者が今後、腰を据えてこのシリーズを長く書いていこうという表れだと、期待を込めて思っている。
軽めのコージー物でありながら、登場人物の骨格がしっかりしていて、押さえどころははずさないチャーチルのこのシリーズも、主婦探偵ジェーン物と同様、何回読み返しても楽しいシリーズだ。

  by wordworm | 2006-06-21 09:49

<< 「ルパンの消息」 「女という病」 >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE