「初秋」

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ロバート・B・パーカー著、菊池光訳
「初秋」
早川書房 (1988/04)
ISBN-13: 978-4150756567


探偵スペンサーシリーズ。
スペンサーと言えばハードボイルドの代名詞のようになっているが、かよわい私には苦手な分野で(おい)
しかしはーどぼいるどと言ってもピンからキリまで。マッチョから酔いどれから知性派からと、読み漁れば自分の好みのハードボイルドが見つかるはずで、食わず嫌いはいけないのだ。私のように。

スペンサーシリーズは過去に「失投」を読んだことがあり、その時にスペンサーとはタフで強くて、随分とよくしゃべる探偵だなーと思った覚えが。腕っ節と頭の回転が揃ってるとはスゴイなーと。
次に読んだ本作は、シリーズ中最高傑作との声が高いものの、実はかなり異色作という話もあり、たかだか2作しか読んでない私には判別つかず。でもとにかく、これは文句なしに面白かった。

離婚した両親の駆け引きの道具に使われ続け、自分で何かをする意志を持たずに育ってしまった15歳の少年ポール。自分の基盤が危うい人間が親になると、子供の基盤をも奪うようになる。そんな親からポールを引き離す為、スペンサーは彼独得のやり方で自立の為のトレーニングを課していく。

ポールに与えるスペンサーの一言一言が、軽く流すような調子でいて、実はとても奥深いものを含んでいる。
子供が大人に成長するということ。15年かけてそこまで辿っていく道筋を、ポールはわずか数ヶ月で一気に駆け上がらなければならない。スペンサーが導いていくその短い間に、大人になる前に私達が得るべき事柄が、非常に凝縮された形で次々と表される。
例え子供を知らなくとも、自分が子供であった頃のことを健全な形で消化していれば、そして大人になるという意味を奥底まで捉えていれば、こんな形を差し出すことができる。
一人の親として、一人の大人として、私にとって彼の言葉の数々は、とても大きいものだ。

ミステリーやハードボイルドといった型も踏まえているものの、それだけを目当てに読んだ人はがっかりするかもしれない。しかし、そんな人も必ず感動させずにはいられないほどのものがここにはある。
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  by wordworm | 2005-12-11 01:35

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