「半眼訥々」

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高村薫著
「半眼訥々」
文藝春秋 (2003/02)
ISBN-13: 978-4167616021


硬派のミステリー作家である氏の、初のエッセイ集。
氏の作品で読んだのは「マークスの山」だが、とても骨太で重みのある文章に、男性作家だと素直に信じてしまった覚えがある。

この本にしても、エッセイと聞いた時に想像する、軽く雰囲気のある柔らかさとは程遠い。むしろもっと肩の力を抜いていいのでは、と微かに思ってしまうほど、堅く生真面目な、でも題材を正面から見ようとする姿勢がひしひしと感じられる。
それは社会を隅々まであまさず捉えようという視点であったり、自分の育った土地を、どの時間も逃さずに覚えておこうという気持ちであったりするが、それは著者本人についても同様の姿勢でのぞんでいる。
自分自身を取り巻いてきた物事や背景等、接点を持ったものに向けられる彼女の鋭い視点と観察力は、全編において見られるが、同時にあくまで個人の意見に過ぎず、自分は凡庸な目しか持たないのだという断りと謙虚さも共存する。

雑文好きな私はエッセイを好んで読むが、例えば曽野綾子氏のように、書かれた意見に大いに頷き、その納得が自分の奥深くまで至る本が幾つかある。それは見事な意見だからということは勿論、単純に大きい意味での世代が一緒だからかもしれず、それが故にその価値観に従じることができるのかもしれず。
この高村氏の訥々とした文に確かに受け入れられるものを感じる私は、旧人類を自覚して恥じることもない。
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  by wordworm | 2005-09-26 13:28

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