「小鼠 ニューヨークを侵略」

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レナード・ウイバーリー著、清水政二訳
「小鼠 ニューヨークを侵略」
東京創元社 (1976/12)
ISBN-13: 978-4488526016


LAの古本屋で見つけて、決して安くはなかったが、飛びついて買ってしまった。
ずっと前、実家の本棚に、このシリーズが並んでいたのだけど、私が読む年齢に達する前に消えていて。
今見てみたら絶版ばかりで、しかもえらい高値がついているではないか。返す返すも口惜しい。この本が復刊されたことは、手放しで喜びたい。

北アルプス山中にある、グランド・フェンウィック大公国。国の広さは長さ5マイル・幅3マイル、唯一特産のワインのみで外貨を得る、自由を旗印にした平和な超小国だ。
ところがその特産ワインの偽物がアメリカで発売され、ちょうど売り上げ不足に悩んでいた大公女達が考え出した奇策。それは、超大国アメリカへの宣戦布告であった。

とても上質で温かい、大人の為の童話である。設定は荒唐無稽なのだけど、笑ったり悩んだり励ましたりと、感情豊かなフェンウィックの人々に魅せられて、気がつけばすっかりはまりこんで、いけいけ~っ!と応援している自分がいる。

初版は1976年。ちょうど米ソ冷戦時代真っ最中で、時代背景もそのまま。それ自体には別に不自然さだの古さだのは感じることなく、ただフェンウィックという国と欧米諸国を比較して、痛烈な批判と皮肉をこめている。
国と国民を一番とし、自由であることに誇りを持つフェンウィック。謀略も汚職も政治的ゴタゴタもなく、フェンウィックらしさを追求するその姿勢に、何回も拍手を送りたくなるのはどうしてか。
比べて、あまりに思いがけない展開で究極兵器を奪われたアメリカや、何とか横取りしようとするソ連やイギリスなどが打ち出す手段や姿勢に、どうしようもなく軽蔑の念を覚えるのは何故か。
大国と呼ばれる規模になり、得たものに対して失ったものの大きさを、ウイバーリーはこの小説で、たっぷりのユーモアを混ぜて示してみせる。

戯画化された国々の面白さだけでなく、全編を通して溢れるものは、どんな国でも変わることのない、人々の情。
富や名誉でなく、大事なものを知っている父バスコム。そしられても勇気を捨てることない息子バスコム。世間と隔絶されていたコーキンツ博士の心さえも溶かすものは、昔から誰もが知っているはずなのに、言い訳を重ねて目をそらしているものに他ならない。

続編3冊が読めないのが残念でならない。続いての復刊を切に望む。
こうなったら復刊ドットコムに日参するしか(燃)
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  by wordworm | 2007-02-25 12:39

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