「飛ぶのがフライ」

e0111545_842769.jpg
ジル・チャーチル著、浅羽莢子訳
「飛ぶのがフライ」
東京創元社 (2007/1/11)
ISBN-10: 4488275125


大好きな主婦探偵ジェーンのシリーズ、待望の9巻目。なんと5年2ヶ月ぶりという新刊だ。
待ち焦がれておりました……!(うるうる)

今回のジェーンは、親友のシェリイ達と一緒に保護者代表として、サマーキャンプの候補地の下見にやって来た。料理は抜群、施設も立派で楽しんでいるところ、またもや死体を発見してしまう彼女。しかも保護者の一人。
またもや騒動かと思いきや、なんとその死体が翌日には消えていて。ジェーン達がおかしくなったのか、それとも何か理由が他に?

頼もしい恋人のメル・ヴァンダイン警部や、しっかり者の子供達が一切出てこない、その意味では寂しい今作だけど、相変わらず畳み掛けるような会話のテンポが快く、いかにも「アメリカ!」な日常が楽しめるところは変わらず。

このシリーズの何が好きって、とっても普通な主婦のジェーンと、彼女を取り巻く全てかも。専業主婦仲間として、料理や子供の送り迎え、PTAや学校のボランティアなどなど、彼女が向き合うあれこれに一々頷き、感情移入がすんなりできる。
そんな彼女の視点から見る事件。当然私にとって面白くないわけがない、と思うが、でもそこはこちらも読者であるので、それなりのレベルの謎解きでないと。
このシリーズはその点でも見事に合格で、これだけ軽いノリを満喫させながらも、事件そのものについてはきちんと練り上げたものを提供してくれるので、コージーとして他の雑多な作品とひとくくりにできない、クオリティの高いものとなっている。

もう一つのはずせない魅力が、彼女達の会話。こうきたらああ返す、ジョークと皮肉の丁々発止のやりとりは、正に思い浮かべるところのアメリカン。
でも原作でいくらそういう会話が表現されていても、それは翻訳である以上、訳文に大いに左右されるのであって。これがこのシリーズ全てを訳してきた浅羽さんという名翻訳者のおかげで、日本語にしても違和感のない、魅力あふれる口語文に見事に姿を変えていて。読んでるこちらは何度も笑わせてもらえるのだ。

ところが巻末で目にした訃報。浅羽さんは本書作製中に亡くなられ、今作が遺作になられたとのこと。
ショックなニュースで、読み終えた後の浮き立った気分も、一気にしぼんでしまった。
これまでの本で、ここまで読者を魅了して下さったことについて、心からお礼を申し上げると共に、ご冥福を静かに祈りたい。
[PR]

  by wordworm | 2007-06-02 08:03

<< 「名探偵のコーヒーのいれ方」&... 米原万里さん、その他の著作 >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE