「ねこのばば」
畠中恵著
「ねこのばば」
新潮社 (2006/11)
ISBN-10: 4101461236
読書記録で、どこに分類したらいいか未だにわかってない「しゃばけ」シリーズ。待望の文庫化、第3弾。
相変わらず、「せっせと間を置かずに、死にかかる」若だんなを中心に(…)、今回は全部で5編の短編を収録。
若だんなと妖怪たちの不思議な人情推理帖、とは良く言ったもので、今作も様々なミステリー@妖怪絡みと、冴える若だんなの推理。脇役達も健在で、思わず「また会えたね!」と喜んで声をかけたくなる。相手は妖怪だけど。
しかしいつもと少々赴きが違うのは、前2作よりやや怖目の色合い。ホラー色のものがあったり、心理的にぞっとするものが描かれていたり。
推理物という側面を持つ以上、扱う題材は”犯罪”であるので、ある意味、避けて通れない要素ではあるのだけど、今までのこのシリーズでは、そういう要素が揃いすぎているわりには(だって妖怪モノだよ)、全編に渡って漂うほのぼのムードが救いとなって、背筋を寒くするようなことはなかったのだな。
でも例えば「茶巾たまご」の最後に明かされる、犯人の言葉。
「産土」の、暗闇にひっそりと少しずつ引きずり込まれていくような恐怖感。
さすがの畠中さんのほのぼの文章でも、ぞっとする気持ちは抑えられず。でもそんなところが、このシリーズも良いペースで描きこまれてきているのだなあ、とかえって嬉しくもなってしまう。
次作の文庫化、文庫化。一刻も早くお願いします。ハードカバーは許して下さい……
あ、でも畠中さんが出し始めた別シリーズは読んでみたいかも。
by wordworm | 2007-08-11 08:26