「死ぬまでお買物」
エレイン・ヴィエッツ著、中村有希訳
「死ぬまでお買物」
東京創元社 (2006/5/27)
ISBN-10: 4488150063
軽くてさっと読めるミステリーを期待して買ってみた。デッドエンド・ジョブ・ミステリと名づけられたシリーズの1作目。
南フロリダ。ここには皆、過去を捨ててやってくる。のっぴきならない事情を抱えるヘレンも同様。高給職を辞めて辿り着いたのは、高級ブティックの雇われ店員。店長も得意顧客も、整形美女の男&買物狂い。価値観の全く違うヘレンは、毎日心が傷だらけ。
しかしどうやら店長は、見えないところで何かをやっているらしい。そんなある日、店長が行方不明になり、更には死体で発見されて!?
相も変わらずこの手のコージーが好きな自分。といっても、なかなか大当たり!となるものに出会うのは難しいのだけど、これはお、当たりかな?と思わせてくれた本。
著者自身、強く賢い女性が活躍するミステリーが大好き、とのことで、このシリーズの主人公ヘレンも、弱音は吐きつつ、その逞しさは人一倍。元々高給取りの仕事をしていただけに、こんなギリギリ生活はさぞかし辛かろうと思うのだけど、それでも紙一重のところで必ず踏みとどまって浮上する。
そして彼女の推理力もまたかなりのもの。コージーといえば時々見かける、ハチャメチャなだけの女の子じゃないんだな。どんな境遇にあっても、一人前の大人の女性。頭の使い方を知っている。
だから彼女の目線で描かれる、事件についてのあれやこれやは、肉付けも適度で分かり易く、着実にステップを踏んでいく。この過程がしっかり仕上がってないと、ミステリーとは呼べないよね。
しかし店長を始めとして、この店を取り巻くレディ達のすさまじいことったら。洋服、お金、男、顔にスタイル、それだけを糧に生きている。ここまで徹底して書かれるとヘレンとの対照ぶりが際立って、十分コメディ要素となっているのだけど、それが後で背筋を冷たくさせるものに変貌する。またそんな彼女たちについてヘレンが評する、そのセリフが絶妙だ。
どうやら2作目がすでに翻訳出版されているらしい。
これまた”買い”のリスト行き。
by wordworm | 2007-09-14 15:22