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「泣かない子供」「泣く大人」

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江國香織著
「泣かない子供」
角川書店 (2000/06)
ISBN-10: 4043480024
「泣く大人」
角川書店 (2004/08)
ISBN-10: 4043480040

前々から気になっていた江國さん。小説家でいらっしゃるのだけど、私が手をつけたのはエッセイからだったりする。

感性の全く違う人、という人達には時々出会う。それは現実であったりメディア上であったりして、良い意味もあれば悪い意味もあり、どちらも私に何らかの感情を呼び起こす。
江國さんとの出会いは、中でも久々に味わった、眩しく鮮烈な新鮮さ。こういう文を書かれる人がいるのだなあ、と、読み進むページの色まで違う気がしてくる。

真面目な、真正面な文章は、実は私には馴染みやすい。頭で捉えた言葉が、確かな輪郭を持って脳に染み渡り、その意味は私の核と相容れる。
しかし江國さんの文の場合は、いつも捉える器官であるところの脳の一部が働かない。そして、通常読書時にはぼんやりとしているところである部分が、生き生きと目を見開いて反応する。
こんな感覚を、本を読んでいる時に味わうことは滅多にないので、続けて五感まで鋭敏になる。そんな、体のあちこちが開いた状態の私の中を、それでもあくまで涼しげに、彼女の文章は通り過ぎていく。

この2冊のエッセイには、日常のことは勿論、過去の思い出、家族への言葉、美しい風景、読んだ本など、江國さんという存在のあちらこちらが、少しずつ開かれては顔を出す。
が、全体を読み終えたところで、彼女という存在について語ることはできなくて。それは、読んでいる私の感性が余りに鈍いのか、それとも見せられているのが余りに断片であるからか。もしくは、そんな小さな穴から覗くには、彼女という人の奥が深すぎるか。

自分との距離がとても遠いので。
だからこそ、ありとあらゆるものに対しての彼女の意見を知りたくて。
小説よりもまだ先に、エッセイというエッセイを読み尽くしてみたくなるのだ。
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  by wordworm | 2007-10-25 13:23

「アルスラーン戦記」第一部

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田中芳樹著
「アルスラーン戦記」(1)~(7)
角川書店

「銀河英雄伝」、そして遅筆で有名な(…)田中氏の、別な代表作。現在もまだ続刊中。

その武力と文化で大陸に名高い、国王アンドラゴス3世が治めるパルス王国。しかし宗教国家ルシタニアの奇抜な侵攻に破れ、王は捕虜に、国は一日で滅亡した。
生き残った王太子アルスラーンは、策士ナルサス、武将ダリューンらの少数精鋭の仲間を率いて、故国の奪還と再興を目指す。

架空世界が舞台のファンタジー、王に女王に騎士団、剣、少年の成長物語と、私の好きな要素がてんこ盛り。これで面白くないはずがない。
田中氏らしい冗漫な部分も少々見られたが、そういうお遊びも何の問題もないほどに、物語は面白要素満載のまま突き進む。

主人公のアルスラーンは、全くもって素直で真っ直ぐなのに、取り巻く周囲のキャラが、これでもか!というぐらいにクセ者ぞろいなんである。特に参謀ナルサスなど、銀英伝で私の一番のひいきキャラであったヤンと共通する部分がかなりあって、やはり戦国モノには知性派は欠かせない(関係ない)
戦闘シーンではやや残酷部分もあるものの、よほど繊細でない限り、その手の描写も必要と思う。戦争はキレイ事の真対照にあるものだからね。

パルス王国の復興を成し遂げる為には、まずは良い国王を擁くことが必須であり。アルスラーンのような無垢に近い若者が、一体どれだけ、そのむごく辛い役目を背負っていけるのか、と不安を持つ向きが大半なのに、彼はその良さを失うことなく、着実に王者としての成長のステップを登っていく。それは周囲の支えがあるのは勿論だが、何よりも彼の真の力量。その特質がとても良い。

一部を終えたところで、しかしまだアルスラーンは成長途上。二部に入って、どこまでいけるか、どれだけの試練が待っているか。
二部も7巻で終えると明言されているだけに、作者の見ているゴールを、読者としても過程を楽しみつつ、共に到着を目指したい。
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  by wordworm | 2007-10-09 08:18

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